世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「梅子さん」

世界がまるで子どもがおやつをねだるような甘い声で私の名前を呼ぶ。
はちみつみたいに蕩けそうな声色の中に、ミツバチの毒針のようにチクッと刺すような意地悪な中毒性がある。

(落ちちゃいそう)

いつの間にか世界が用意した深い深い恋の落とし穴にはまっていくのがわかる。

「言って」

世界級のイケメンが私へむける視線だけでもう緊張が限界だ。なかなか返事ができない私のと距離を世界がさらに詰めると、ダブルベットがギシッと軋み、喉から心臓が飛び出そうになる。

私は小さく深呼吸してから、か細くその名前を吐き出した。

「……せ……かい、くん……」

自分の口から名前を吐き出した途端に、思わず顔を覆い隠してしましそうなほどに恥ずかしくなってくる。多分顔は真っ赤だ。私は世界に見られたくなくてふいと顔をそらした。

「ふっ……呼び捨てでいいすけど、ま、いいです。じゃあ梅子さん、三カ月の契約交際ってことで宜しくお願いします」

世界はにんまりしてベッドから立ち上がると、黒いスウェットの袖を捲りながらキッチンへと向かっていき、トーストを二枚オーブントースターに放り込んだ。

「御堂くん、待って」

私はあわててベッドからおりると世界の背中に向かって声をかける。

「ちがう。世界!」

世界が振り返りながらそういうと口を尖らせながら冷蔵庫を開ける。

「ねぇ、梅子さん、目玉焼き、片面すか?両面すか?」

「え、待って、私そろそろ」

言いながらフライパンに世界が慣れた手つきで卵を二つ落とした。ジュワッという音と共に世界がベーコンも一緒に放り込む。

「とりあえず契約交際とはいえ、付き合うってことは両思いってことなんで、両面にしますね」
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