劣等生と魔法のキス
申し訳なさが募り、ミアはリーマスに杖を向ける。杖を動かし、頭の中で想像し、ミアが唯一間違うことなく使える魔法の呪文を口にした。

「フルール!」

呪文を唱えるとポンという音がし、杖先から一輪の花が現れる。白と黄色の可愛らしい花からは、リンゴのようないい香りが漂っていた。

「この花は、カモミール?」

リーマスが大きく目を見開き、言う。カモミールはハーブティーとして昔から重宝されてきた。ヨーロッパでは昔から就寝前に安眠のために飲む習慣があったほどだ。

「そう、カモミールだよ。髪の毛をグチャグチャにしちゃったからお詫びに」

ミアがそう言うと、リーマスが突然両手を大きく広げて抱き付いてくる。突然のことにミアの口から変な声が漏れ、心拍が上がった。

「ちょっと、リーマス!?」

強めに背中を叩いてみたものの、リーマスは離れる気配はない。リーマスはどこか苦しげな声でこう言った。

「ミア、僕らが初めて会った日のこと覚えてる?」
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