劣等生と魔法のキス
「リーマス、助けてくれてありがとう。本当に、ありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう……」

何度もお礼を言いながら、ミアの手は震え、涙が頬を伝っていた。もう終わったというのに、今になって恐怖がやって来ている。震えながら泣くミアの体を、リーマスが大きな両手で包み込んでくれた。

「大丈夫、もう大丈夫だよ」

優しく頭を撫でられ、ミアは首を縦に振る。ミアの涙と震えが収まるまで、リーマスは優しく頭を撫でてくれた。

「リーマス、ありがと。もう落ち着いた」

ミアがそう言いリーマスから離れると、リーマスは「二つやりたいことがあるんだけど、いい?」と訊ねる。ミアが頷くと、リーマスは杖を動かして呪文を唱えた。

「フルール!」

ポンと音がして、リーマスの杖の先に花が咲く。その花はーーーカモミールだ。カモミールをリーマスはミアに手渡す。

「元気が出ますように」

その言葉を聞いた刹那、ミアの中に三年前の記憶が蘇る。三年前の入学式の日、ミアは校舎の裏で泣いている男子生徒を見つけた。その時、カモミールの花を渡したのだ。リーマスが言ったことと同じ言葉を口にして。
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