劣等生と魔法のキス
「はい……」

悔しげにプリーツスカートを握り締めるミアの背中を、一人の男子生徒がジッと見つめている。金髪に碧眼の美しい男子生徒の顔は、どこか赤く染まっているように見えた。



全ての授業が終わった放課後、ミアは一人魔法薬学の教室で提出しなければならない薬の調合をしていた。ヴァイオレットは委員会の会議があるため、ミアは黙々と作業を続ける。しかしーーー。

「あっ、また失敗……」

魔法をかけた途端、一生懸命調合した薬は花に変わってしまう。一度目はプルメリアが、二度目はオレンジのガーベラ、三度目はカキツバタ、そして四度目は紫のチューリップがミアの目の前で咲いている。

「今日は全然ダメだな。いつもよりドジしてる」

先生から向けられる冷たい目、クラスメートたちが囁く声、優秀な兄と姉の姿、悲しいことが一気に頭の中を巡り、ミアは俯いてしまう。その時だった。

教室のドアが開く音がした。ミアがハッとしてドアの方を向けば、そこには金髪碧眼の男子生徒が立っている。その生徒は、ミアのクラスメートで、この学校一有名な生徒と言っても過言ではない存在だ。
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