ようこそ、新たな自殺志願者たちよ



 決して寒くはない。なんなら外は暑いくらいだ。けれど、中に入るとひんやりと冷気が漂っている気がする。

 オレは幽霊は見えないけれど、なにかおかしいな、と、そのくらいは分かった。

「も、もう出――」

 「もう出る?」そう言いかけた瞬間、アヤはオレの腕にしがみついてゆっくりとしゃがんだ。

 あきらかに具合が悪そうだ。

 やっぱり無理させるんじゃなかった……気味悪いし、もう出よう、と、アヤを支えるように背中に手を回したその瞬間、オレの頭にゴン! と、勢いよく、固いもので殴られたような、そんな言い難い激痛が走った。

「あ、いっ……」


 辺りを見渡しても誰もいない。

 アヤを支えないといけないのに、頭がカチ割れるように痛い。

 こんなの、記事には書かれていなかった……もしかしてこの激痛が耐えられなくなって、皆死にたくなるのだろうか……


 ……間違いない、見えないけれどなにかいる。

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