ようこそ、新たな自殺志願者たちよ


 すると、殺人鬼の声は頭に流れてこなくなった。痛みも和らいだ。

 オレの声は伝わっているんだろうか。

 ――元死刑囚というアヤの話が本当なら、コイツは元人間だし、オレの頭に流れてきていたのは日本語だから伝わっていると信じたい。

「亮、こいつ、顔色が変わった。……気をつけて」

 さっさまでガチガチに緊張していたけれど、アヤが説明してくれるおかげで、逆に変な緊張はしなくなっていた。

 殺されるかもしれないのに。

「オレ達は自殺志願者なんかじゃない。それをおまえは……」

 脳みそに直接送り込んで、マインドコントロールで操るだなんて、そんなの許せない。

 ……許さない。

 『死にたくなる、恐怖の廃墟病院』だなんて、そんな都市伝説、オレが終わらせてやる。


 スマホを殺人鬼に見せるように差し出し、ニュースの画面を見せる。

「ほら、ここ。50年前におまえは死刑になっている」

 アヤが「亮」と、オレの名前を読んだ。

「死刑囚が『もう、ワタシは、この世にいない?』って聞いてる」


 アヤにはこいつの声が聞こえるらしい。

 「もうこの世にはいない」その声に、コイツは本当に殺人鬼のタカハタ元死刑囚なんだということを実感した。


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