ようこそ、新たな自殺志願者たちよ


 痛みが和らいだからといっても油断はできない。気を緩ませたら一気に体ごともっていかれそうだ。根拠はないけれど、なんとなく、そんな気がした。

 むしろ、気を緩ませないように殺人鬼に喋りかける。
 
「死刑になってるからな。15人の命を奪いやがってふざけんなよ……やっていいことと悪いことの区別もつかなったのかよ……」

 ――恐怖だった感情が怒りに変わる。

 当時の事件は50年前のことということもあり知りもしなかった。けれど、オレの大切な人、例えば家族だったり、アヤが刺されたりなんかしたら、腸が煮えくり返りそうだ。

 ――正気じゃいられない。ぐっと力強く噛みしめると、

 アヤはまた、代弁するかのように口を開いた。

「犯行後の記憶はない。『今から刺すヤツは全て自殺志願者』と思わなければ殺せない、気がした。そうか、15人もの命を奪ったのか」

 犯行後の記憶がない……衝撃だった。

 ――そんなことがあるのか。

 後悔しているのか、していないのか、分からなかったけれど、これだけは伝えなければいけない。

「おまえは確かに自分の存在を知れ渡されることはできたよ。大量殺傷事件の死刑囚として、な。どうだ、満足かよ?」

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