ようこそ、新たな自殺志願者たちよ
それどころか、オレの手を掴んで離さない。アヤと手を繋ぐのは何年ぶりだろう。
少し胸の奥がむず痒くなりながらも、アヤの手を引いて廃墟の病院に向かう。ちらっと見えた都市伝説と言われる病院はこじんまりとしていて、建物も古かった。
いつ廃業したんだろう。
アヤはというと、「うっ、気持ち悪い……」と、オレの手を握ったまま地面に蹲ってしまった。慌ててアヤの背中を擦る。
「大丈夫か!? 無理すんなよ……」
「……中に……なんか……いる……声がうるさい……」
「え、な、なに言ってんだよ。冗談はいいから……」
「嘘じゃない、本当だよ……」
「は? 本当って……おまえ……」
「アタシの家系、霊感強くて。お母さんもお婆ちゃんも視えるの……絶対、誰にも知られるなって言われて育ってきたから……」
「だから言わなかった」と、嘘をついているようには思えないアヤの表情に、手の汗が滲み出る。
そう言われれば、アヤは昔から急に顔色が悪くなったり、視線を逸したり、こっちに移動しようということが多かった気がする。
――でも、そんな大事なことを今言われたって……
頭の中が混乱して、思考が止まってしまっている。
「……嘘だ。だって、この場所はただ、噂されてるだけの場所だろ」