15歳差の愛してる.
―――ブロロロロロロ…

バイクの音が響く


「さあどうぞ。」

私の隣に座った店長の前に
湯気をたてた緑茶が置かれた

お母さんが入れたお茶は
苦くてあんまり好きじゃない

「ありがとうございます」

いつもお客さんに言う口調とは全然違う
店長のありがとうございます

何か新鮮だった

綺麗に片付けられたテーブルの上には
お茶とガラス製の灰皿。
フラワーデザインで造った花の飾りもの。

それしか置いてなかった


長い沈黙

―――ズズズッ…ゴクッ

店長のお茶を飲む音が響く

私の気持ちだもん
私から言わなきゃな

「…えっと」

口を開いた私に両親の視線が集まる


―――ビクッ

急に心臓がバクバクして来た

膝の上でギュッと拳を作った

―――よしっ

「……えっと…明日」

手に汗がジワジワと出て来るのが分かった


……言えない

もう私の視線は
床を向いていた

……決めたのに
言うって。

作った拳の力がドンドン強くなっていった

―――フワッ

その手の上に優しい店長の手が重なった

両親にバレない様にそっと重なった

―――頑張れ

ソレは無言の応援だった


ありがとう
店長
言えるよ

だんだんと拳の力が抜ける


顔を上げると両親はもう
私を見ていなかった

またひるみそうになったけど
今なら言える


「明日、私と一緒にお葬式に来て欲しい!」


両親の顔が急に強張った
何か言いたげの顔

でも私は負けないよ


「お母さんもお父さんも本当は行きたいんじゃないの!?
最期位へんなプライド捨てなよ!
お兄ちゃん待ってるよ!
来ないかな来ないかなって待ってるんだよ!」

―――ドンッ!

お父さんがテーブルを叩いた

また静まり返る家

お父さんの低い声が響く

「さくらも分かってだろ。
わたるがどんなに俺達に迷惑をかけてきたか。」
< 47 / 121 >

この作品をシェア

pagetop