粉雪
一枚目に出てきたのは

桜の花びらが舞う中で両手を広げて微笑む加奈


「初めて加奈に出会った日。」


加奈に比べたら小学生のお絵描き程度


それでも
俺は続けた



ゆっくり一枚目を捲る


二枚目は
河川敷で真剣に絵を書いている加奈


「加奈が輝いているとき。」


加奈は驚きで目を丸くしていた



そして
三枚目を見せる


俺が筆を渡した時の笑顔の加奈


「加奈は描きたいって、全てを知りたいって思う人が居ないって言ってたけど…
俺には、全てを知りたいって、描きたいって強く思う人が居るよ。

そして
誰よりも笑っていて欲しい人が居るんだ。」


加奈の瞳から一粒の滴が
スケッチブックに落ちた


「加奈?
こっち向いて?」


俺の言葉にゆっくり顔を上げる加奈


「俺を描いてくれないかな?加奈の初めて描きたいって思う人を…俺にして?」


加奈のほほを伝う涙をそっと親指で撫でた



「俺…加奈が好きだよ。」







< 25 / 41 >

この作品をシェア

pagetop