タロくんとハナちゃん
「華子ちゃん、大丈夫だから。
俺はただ、話がしたいんだ。
落ち着いて」
優しく頭を撫でながら言う、剛史。

「………つ…しく…」

「うん。声、少し出てきた…」

「ん…」

「俺の質問に答えて?
あ!わかってると思うけど、妙な真似したら……その場で殺るからね!」

鋭い剛史の視線。
華子は、怯えながらうんうんと頷いた。

「華子ちゃんは、タロマルの総長の女?」

華子が頷く。

「そう…」
剛史は切なく瞳を揺らし、華子の耳に触れた。
両耳に、マーガレットのモチーフのピアスがついている。

「これ、もしかして……」

「彼…から…のプレゼ…トです」
怯えながら、なんとか言葉を発する。

「この、ネックレスも?」
ネックレスは、太朗とペアのネックレスだ。

華子、頷く。

「あんな男の何処が良いの?」

「全…部です」

「は?」

「笑われる…かもしれませんが…私はタロくんと出逢えたこと…運命だと思ってます」
怯えて声が震えていたが、ゆっくり、でも…はっきり伝えた華子。

「は?ほんと、ウケるね、それ」
少し退いたように……でも、何故か真剣な表情(かお)で言う剛史。

「はい。笑ってくれて構わないですよ」

「………って、笑うわけないじゃん」

“え?”と華子は、目をパチパチして剛史を見上げる。


「……………
━━━━だって、華子ちゃんは……俺の運命の人だもん!」

華子は、更に目をパチパチさせた。


「ねぇ…あんな悪魔なんかやめて、俺と付き合おう?
あいつ、とんでもない奴でしょ?
俺なら、華子ちゃんに何でも与えてあげる。
お金も愛情も、気に入らない奴がいたら俺が消してあげる!
絶対!不自由になんかさせないし、怖い思いもさせない!」
華子の肩を持ち、訴えるように言う剛史。


しかし華子は、ゆっくり首を横に振った。

「ごめんなさい。
私が、タロくんじゃなきゃダメなんです」

「なん…で…?」

深く頭を下げる、華子。


「なんで━━━━!!!!?」

剛史は華子の手を掴み、強引に引っ張った。
そのまま、店を出て停めていた車の後部座席に押し込んだ。

「キャッ!!?剛史く━━━━」
「黙れよ」

「ひっ…!?」
「今から、俺達だけの世界に行こ?」

「え……」
「俺、母親の再婚で小学校卒業して引っ越したんだ。
その再婚相手が、チョー金持ちでさ。
親父が俺に、別荘をくれたんだ。
……………そこを、俺と華子ちゃんの世界にした。
二人で、閉じ籠ろうよ……!」


「え……」


何…言っ、て…る…の…?
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