タロくんとハナちゃん
「━━━━大丈夫だよ!幸せにしてあげるから!」

「やめ…て…くだ、さ…お願…つよ…く…」
声が震え、身体もガクガクしている。

怖い。
怖い。
怖い。

「この六年。
ずっと、この日を夢みてた。
その為に、頑張ったんだよ?
強くなって、幹部までのしあがって…!
…………華子ちゃんのために頑張ったんだ!
ご褒美、ちょうだい?」
剛史の顔が近づいてくる。

助けて。
助けて。


助けて!タロくん━━━━━!!!


すると、遠くからバイクのエンジン音が近づいてくる音がしてきた。

この音………


「タロくん!!!?
剛史くん!離してください!!お願━━━━━━」

「黙れっつったよなぁ!!?」

「ひっ!!?」

「……ったく…来んのはえーよ……」

華子に“いい?もし、ここから出たら……わかるよな?”と耳打ちして、後部座席に残しドアを閉め鍵をかけた。


「━━━━ハナちゃんを返して」

バイクから降りた太朗が、剛史を見据え言う。
とても冷静だが、隠しきれない恐ろしい怒りが太朗から漂ってくる。

「やだって言ったら?」

「そんなの、決まってるよ。
抹殺するだけ」

「逆は考えないの?」

「は?」

「君達が、抹殺される方だって」

「それはない。
あり得ない」

「どうしてそう言い切れるの?
確かに、太郎丸の総長は破壊的な強さがあるって有名だけど、わからないだろ?」

「僕に勝てる人間は、この世に一人しかいないから。
それは、お前じゃない」

「だったら……五分くらいで俺を倒さないと、華子ちゃんが死んじゃうよ?」

「は?」

「この車の中、密閉状態なんだ。
エンジンをかけると、空気が入れ替わるんだけど、見ての通り、エンジンかかってないだろ?
しかも恐怖とパニックで、更に過呼吸状態。
ね?わかるだろ?
五分以内に俺を倒して鍵を奪うか、大人しく行かせるか。
早く決め━━━━━━うがっ!!?」

あっという間に太朗が剛史に殴りかかり、剛史が倒れる。

「うるせーよ、クズ…
僕のハナちゃんを誘拐したばかりか、死んじゃうよって……
え?何?そんな早く死にたいの?
それにお前程度が、僕を抹殺?
あまりにも自惚れが凄くて、笑いが出る」

たった一撃の、太朗の拳。
それだけで、剛史は気絶した。


太朗は、剛史から車の鍵を奪った。
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