タロくんとハナちゃん
車の鍵を開け、ドアを開ける。

「ハナちゃん!!?」
華子は、ぐったりしていた。

太朗は華子を抱き上げ、車外に出す。

ゆっくり、地面に下ろした。
「ハナ!!?」
「「「ハナちゃん!!」」」
理一郎や俊彦達も、呼びかける。

「ハナちゃん!!ハナちゃん!!
お願い、起きて!ハナちゃん!!」
太朗が、華子の頬を何度も叩き呼びかける。

「「「ハナ(ハナちゃん)!!!」」」

微かに瞼が動いて、ゆっくり華子が目を開けた。

「「「━━━━━!!!?」」」

「タロ…く……」
「ハナちゃん!!!」

ゆっくり、太朗の頬に触れようと華子が手を伸ばす。
その小さな手を、太朗が握った。

「ハナちゃん、良かった……もう大丈夫だよ!」
「私…は、タロく…がい……」

「ん?」
「閉じ籠るなら…タロく…がいい……
だから…つよ、しく…ごめ…なさい……」

混乱しているのか、必死に剛史に訴えようとしている華子。

「うん、大丈夫だよ!
僕がそんなことさせない!
ハナちゃんと閉じ籠ることができるのは、僕だけ!」

太朗が安心させるように微笑み言うと、華子も安心したように微笑み、ゆっくり目を瞑った。

太朗は華子の頬に触れ、数回撫でると小さくキスをした。

━━━━━━!!!!?

その姿を見ていた理一郎達に、緊張が走る。
急に、この空間の空気が重く落ちたからだ。

「理一郎」

「ん?」

「ハナちゃんを、病院へ」

「あぁ、わかった」
「理一郎さん、俺が」
俊彦が抱き上げ、自身の乗ってきた車に向かう。

太朗はそれを確認すると、ゆっくり立ち上がり剛史の方へ戻った。


そして、倒れている剛史に馬乗りになった。
気絶している剛史を起こすため、頬をおもいきり平手打ちする。

「……っあ…!!?」
剛史が目を覚ます。

「おはよ」

「え……
━━━━━!!!!?」

この後剛史は、地獄を見ることになる━━━━━━

笑顔の太朗。
その微笑みが、凄まじく恐ろしい。

無意識に、身体がガクガクと震え出す。

「やだなぁ」
太朗がポツリと呟いた。

「え…」

「君は、ハナちゃんの小学生の頃を知ってるんでしょ?」

「は?」

「ハナちゃん、やっぱ可愛かった?
可愛かったんだろうなー
今だって、クソ可愛いじゃん!」

この状況で何を言ってるんだ………?

剛史は、ただ…太朗を見上げる。

「ねぇ、質問に答えてよぉー」

「あ、あぁ…」

「だよね~!ハナちゃん、可愛いもん!」

「━━━━━!!!?」

そして突然、太朗の雰囲気がズン!と更に落ちた。

「でもね………
その可愛い、可愛いハナちゃんの顔がね」

「あ…あ…」

「さっきは、恐怖と苦痛に歪んでた」
剛史の顔を、おもいきり殴る。

「あがっ━━━!!?」

「可哀想に……
物凄っく、怖かったんだと思うんだ」

「ふごっ!!?」

「ハナちゃん、怖がりでしょ?
だから、余計に……」

バコッ!バコッ!と何度も、拳を振り下ろす太朗。
しかし顔は、悲しみと苦しみに歪んでいた。
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