タロくんとハナちゃん
「━━━━━はぁ…」

「え?どうしました?」
(私といて、楽しくないとか!?)

突然、ため息を着いた太朗。
不安そうに太朗を見上げた。

「どうすれば、ハナちゃんを独り占めできるかな?」

「へぁ?」
想像とは違う太朗の言葉に、変な声が出る華子。

「ハナちゃん、気づいてないの!?」

「え?」

「ハナちゃんが可愛いから、さっきから男達に“可愛い”って注目されてるんだよ!?
……ったく…僕、嫉妬でおかしくなりそうだよ!!」

「え……」

「ハナちゃん、ちゃんと警戒心持たなきゃだよ!」

「………」

「ハナちゃん!返事は!!?」

「……それを言うなら、タロくんだって……」
言い聞かせるように言ってきた太朗に、華子も思わずポロリと呟いた。

「は?」

「た、タロくんだって!」

「は?何が?」

「え?あ、ご、ごめんなさい……!」
太朗の鋭い視線に、たじろぐ。

「何?言って?」

「な、何もない…です…」
俯き、ぼそぼそと言う。

そこに、俊彦から太朗にメッセージが入る。

【たけちゃん(助教のあだ名)の講義、今日休講になったみたいっす!
どうします?
たまり場行きますか?
行くなら、門で待ってます(^^)v】

「………」

少し考えて、太朗は返信する。
【行かない。
ハナちゃんとラブラブしたいから】
【了解で~す!】

スマホをテーブルに置いた、太朗。
華子に向き直った。

「ハナちゃん、デートしよ?」


大学を出た、太朗と華子。
指を絡めてしっかり繋がれている。

「ハナちゃん、どこ行きたい?」
前を向いたまま言った、太朗。

「え?私は何処でも…」

「何処でも?」
ピタッと止まり、振り返った。

「はい。何処でも」

「じゃあ、ホテルでもいいの?」

「━━━━え!!?」

「何処でもいいんだよね?
だったらホテルに行って、ハナちゃんを好きなだけ抱いていいってことだよね?」

「え?/////あ…/////いや…そ、それは、ちょっと…//////」

「どうして?」

「だ、だってこんな、真っ昼間から…/////」

「でも、ハナちゃんを閉じ込めるにはそこしかないよ?
もちろん、家に帰ってもいいけど」

「タロくん、どうしたんですか?」

「どうもしない。
僕は、ハナちゃんが好きなだけ。
それしかない」

太朗は華子を見据え、至って真剣な顔で言い放った。
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