タロくんとハナちゃん
早く太朗の元へ行き、あの胸に抱きついて、苦しくなるくらい、骨が折れそうなくらいに抱き締められたい━━━━━━

華子は、太朗の方に足早に駆けていこうとする。


すると━━━━━

「え……」

「わぁ…やっぱ、可愛い~」
「君、一人?」

「え?」
五・六人の若い男達が、華子の前に立ちはだかった。

「スッゲー可愛い!」
「俺達と遊ばない?」
「何処でも連れてってあげるよ!」
「行こ?」
華子の手を掴む男。

「ちょっ…離して……」

「可愛い…////」
「こんな子、いんだな!」
「アイドルとかにいそうだよなぁー」
「マジ、タイプ!俺」
「名前、何てーの?」

「………」

小柄な華子。
男達に囲まれ、あっという間に身動きが取れなくなる。

怖い。
怖い。
怖い。

“何かあったら、叫んで?”

叫ぼうとするが、怖くて声が出ない。


「━━━━━━僕の恋人だよ!」


そこに━━━━重く、冷たく、恐ろしい声が響いた。

「え?」
男達が振り向くと…………

「僕の彼女に気安く触らないでよ」

咥え煙草の太朗が立っていた━━━━━


「え……お前…どっかで……」

「あ?
ほら、その汚ない手を離してよ。
彼女が穢れる」
咥えていた煙草をペッと吐いて、男達を睨み付けた。

「す、すんません!!」
太朗の恐ろしさに、バッと華子から離れる男達。

「は?謝って済むと思ってるの?クズ!」

「え?」

「さぁ……どうされたい?」

不敵に笑う太朗に、男達はビビり後ずさる。

「タロくん!!」

「え?」

「やめてくださ…」
華子もかなり、ビビっていた。

「あ、ハナちゃん!?」
慌てて華子に駆け寄る、太朗。

「私は大丈夫ですから!」
「ん。わかった!」
安心させるように言った華子に、太朗は抱き締め背中をさすった。


「タロくん。
もう、お家帰りませんか?」
「ん。いいよ」

「それで…あの…/////」
「うん」

「家に帰ったら、ずっと…ギュッてしててもらえませんか?」

「え……/////な、何、この…////破壊力のある可愛いハナちゃん/////」

「…………私…私も、同じです…!」

「ん?」

「タロくんの目に私しか映らなきゃいいのにとか、私の声しか聞けなくなればいいのにとか、頭の中も私の事しか考えられなくなればいいのにって思ってます」

「え……ハナ…ちゃ……」


「━━━━━私だって、イカれてるくらいタロくんが大好きです!」

思いがけない華子の言葉に、フリーズしている太朗。

華子は少し目を潤ませ、微笑んで言った。

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