タロくんとハナちゃん
「…………
へぇー!ほんと、僕達にぴったりだね!」
そう言って、顔を寄せてくる太朗。

「益々僕達は、離れられないね……」
華子に耳打ちをして、チュッと頬にキスをした。


そして、後日━━━━━

「やだ、やだ!
ハナちゃん、行かないで?」
「でも、講義はちゃんと出ないと…」

また週に一度の、華子だけが取っている講義の時間。
講義室前で抱き締め、駄々をこねる太朗を、華子は必死になだめていた。

「ハナちゃんは、寂しくないの?」
「寂しいですけど…」

「でしょ?
サボろ?
大丈夫。上手く出席したことにするから!」
「だ、ダメですよ!
ちゃんと、講義は出ないと……」

「………」
「タロくん?」

「……わかった」
「え?え?」
あんなに駄々をこねていた太朗。
急にスッと退いたため、不安になる華子。

「ハナちゃんを困らせたくないから、我慢する!」

「タロくん…
ありがとうございます!」

「その代わり、なんかハナちゃんの私物貸して?
それを握りしめて耐えるから!」
微笑む華子に、太朗は手を握り言う。

「…………じゃあ…タロくん、これ」
華子は、つけていた腕時計を渡した。

「これ、ハナちゃんのお父さんから貰った腕時計だよね?」
「はい!お父さんの形見です!
タロくんなら、いいですよ!貸します!」

「ありがとう!
フフ…嬉しい!ハナちゃんの宝物~!
じゃあ…借りるね!」
やっと太朗に笑顔が戻り、華子は安心したように講義室に入った。

太朗は腕時計を一度握りしめ、手首にはめた。

「タロさん、行きましょ?」
「ん」


「華子!遅いよ!」
水羅が席を取って待っていて、華子は慌てて向かう。
「ごめんなさい!」

「課題やって来た?」
「あ、はい」

「見せてー」
「はい」

「……凄っ!綺麗に纏まってる……」

「あ、実は……タロくんが、手伝ってくれて……
正直、私一人じゃ……こんな風にできません(笑)」

「へぇー!やっぱ、凄い人だね!」

「はい。私には、もったいない人です/////」

「…………そうだね…」

「え?ごめんなさい、聞こえませんでした」

「………ううん!
ほら、教授きたよ!」
「あ、はい」
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