タロくんとハナちゃん
「私は、タロくんに出逢えたので!
………ってタロくんは、一人の人間なのに“モノ”なんて失礼ですが……(笑)」

「………っ…」
太朗は、自身の前髪を掴みかき上げた。

「え?タロくん?
どうし━━━━━━」
華子は、太朗に抱き締められていた。

「もう!!それ、反則!!
なんで、そんな…可愛いのーーー!!
これ以上、僕を夢中にさせないでよ!!」

そして向き直った太朗。

「タロくん…」

「僕にとっても、ハナちゃんは宝物だよ!」

「はい!」

「腕時計、ありがたく貰うね!
大切にするから!
ハナちゃんと同じくらいに!」

「はい!」


このまま、指輪のことは考えずに済むと思っていた華子。
太朗にも、なんとかバレずに済みそうだと安心していた。

が。
そんなわけにはいくわけがなかった━━━━━━

「ハナちゃん、このカットバンどうしたの?」
一緒に夕食の調理中、太朗が華子の指を見て言ってきた。

「え?あ…ちょっと、怪我を……」

「は!?怪我!!?
いつ!!?何処で!!?
…って、◯◯の講義中だよね!!?
それ以外は、ずっと一緒なんだから!」
凄い剣幕で、まくし立てた太朗。

心配で、動揺が隠しきれない。

「えーと…
大丈夫です!怪我って言っても、大したことないし!
しかも、この程度…」

「…………とりあえず、手当てしないと!」

「へ?」

「消毒、しておこう!
こっちおいで?
僕がしてあげるからね!」
華子の手を引き、ソファに促そうとする太朗。

しかし、カットバンの下を見られるわけにはいかない。

華子は思わず、バッと掴まれた手を引っ込めてしまった。

「は?」
華子に拒否されたような行為に、太朗は深く傷つき、思わず華子を睨んでしまう。

「あ…あ…ごめん…なさ…」

「ハナちゃん、なんで……?」

「違うんです!ごめんなさい!」

「何が違うの?」

「そ、それは……」
(ど、どうしよう……なんか、変な方向に話が……
逆に怒らせてるし……)

「ハナちゃん、ダメだよ」

「え……タロ…く…」

「僕を拒否するなんて、ダメ」

「そんなつもりで……」

「見せて?指」

「え……あ…」


「見、せ、て!」
有無を言わさない、太朗の視線が華子を突き刺していた。
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