タロくんとハナちゃん
“いいか?
明日までに連れてきたら、解放だ。
もし連れてこれなかったら、お前が身代わりだ”

そう約束して、一時的に解放された水羅。

“あ!わかってると思うけどー
逃げるなんて、考えんなよ?
俺達は、ずーっと見てるからな?”


どうしよう……
どうしよう……
どうしよう……………!!

華子を連れていかないと、私……!!!?


その日水羅は一睡も出来ず、大学へ向かった。

幸い、水羅は華子と同じ講義が多い。
ただ、太朗が華子から離れないから近づけないだけ。

しかし今日は、近づけないなんて言ってられない。

講義室に入ると、太朗、華子、俊彦が並んで座っていた。
華子にすり寄って、イチャイチャしている太朗。
マイペースにスマホゲームをしている、俊彦。

不思議な空間にいるような三人。
この独特の三人の雰囲気に、誰も近づけない。

水羅は意を決して、ゆっくり近づいた。

「フフ…ハーナちゃん!好き~!」
「タロくん/////恥ずかしいです////
ちょっ…離れてくださ…////」

「やだー!離れないもーん!」
べったりくっついて、今にもキスしそうな太朗。

華子は顔を赤くしながらも、太朗に見惚れていた。


「━━━━は、華子!!」

思いの外、大きな声が出た水羅。

「え?水羅ちゃん?」

「あ、あの…ね…」

「向こう行ってよ」

「え……」
鋭く、冷ややかな太朗の言葉と声。
水羅は思わず、ビクッと怯え後ずさった。

「君、わかんないの?
僕がハナちゃんと話してんだから、邪魔しないで!」

「あ…タロくん!」

「ん?なぁに?
ごめんね!
ハナちゃん以外の人間…しかも、女を見ちゃった。
もうよそ見しないからね!」
優しく微笑み、頭をポンポンと撫でた。

自分に対してとは真逆の態度に、水羅は思わず固まる。

「そんな言い方……やめましょ?」

「えーなんでぇー」

「水羅ちゃんは、私の友達だし……」

「は?ハナちゃん、友達だったら…ハナちゃんの大事な指輪を“一日貸して”なんて言わないよ?
何に使うか知らないけど、普通言わないでしよ?
人の指輪を貸してなんて。
何か意図がないと。
百歩譲って貸してほしかったにしても、ちゃんと理由を伝えるはず。
それが、友達だよ!」

「それは……」

「とにかく、俊彦。
どっかやって?
僕はもう、ハナちゃん以外見ないから」

俊彦に言い放ち、また華子にべったりくっついて愛でだした太朗だった。
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