タロくんとハナちゃん
やだ!
やだ!
やだ!

助けて!
助けて!
助けて!

男達に両手と口を押さえつけられる。
必死にもがくが、びくともしない。

タロくん!
タロくん!
タロくん!!


ビリビリ……と嫌な音が響いて、服が破られる。

「んーーー!!!?」

ほんとに嫌!!!!!


“ハナちゃん、そんな時は━━━━━”


(はっ……!!!!?)

不意に、太朗の言葉が華子の頭の中に蘇る。


「━━━━━━!!!!?」


「んがぁぁぁーーー!!!!?」

「「「柴多さん!!!?」」」

華子を組み敷いている柴多が、変な声を出して転げ回った。

一瞬……華子が解放された。

その隙に華子は、駆け出した。


とにかく、外に出て助けを━━━━━━

タロくん!
タロくん!
タロくん━━━━━━━!!


しかし━━━━あっという間に後ろから捕まり、羽交い締めになってしまう。

「キャッ!!!?
嫌!!嫌!!嫌、離して!!」

「……っ…お前…俺様にこんなことしてタダで済むと思うなよ……!!!?」

「ひっ…!!!?」

「おい!!薬!!!」
「はい」

柴多に、例の注射が渡される。

(もう……だめ………)

華子は、ギュッと目を瞑った。


すると━━━━━━━

入口の方から何かが飛んできて、ドサッと華子と柴多の近くに落ちた。

「は?」
「え……な、何?
━━━━━!!!!!?」

「な、な、な……!!!?」

華子と柴多は、目を見開き固まった。

それもそのはず……
投げ込まれたのは“人”だったからだ。

紫蘭のメンバーの男だ。

「う…う……」
まだ生きてはいるが、かなりぼろぼろになぶられている。

するとまた、紫蘭のメンバーの男が投げ込まれた。

それが五人程続くと━━━━━


タタタッと駆けてくる足音がして、今度は柴多が突然飛ばされた。

「え……」
華子が固まったままいると、ふわりと温かいモノに包まれた。

すぐに誰かわかった。

「タロくん!!タロくん!!」
「ハナちゃん…ハナちゃん…良かっ…た…
遅くなって…ごめんね………!」

太朗は、震えていた。
声も、身体も………

「良かった……ハナちゃん…顔、ちゃんと見せて?」

太朗は、華子の頬を包み込み顔を覗き込んだ。
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