タロくんとハナちゃん
「━━━━━は?マジかよ……」

帰り道、山を降りようとして走らせていると、通行止めになっていた。

土砂崩れで、復旧は明朝らしい。

「ど、どうしよう……」
思いがけない事態に、理一郎の服を咄嗟に掴む華子。

「………」
理一郎は華子の頭をポンポンと撫で、周りを見渡し「しゃねぇか…」と呟いて、華子の手を引いた。

「え?理一郎くん?」

「ここにいても、身体を冷やす」
手を引かれながら聞いてくる華子に、前を向いたまま淡々と答えた。


そして、近くにポツンとあるラブホテルの前にたどり着いた。
「え……ここ…理一郎くん…」

「しゃねぇだろ?
ここしかないんだから」

確かにそうだ。
雨足もだんだん増してきていて、雨宿りできる建物はここしかない。

二人は、少し緊張気味に中に入った。



「━━━━心配すんな。俺は何もしない」

「わ、わかってるよ」

部屋に入り、やっぱり緊張している華子に言った理一郎。

「ハナ。
とりあえず、タロに連絡しろよ。
恐ろしいが…ちゃんと連絡しとかないと、もっと恐ろしいだろ?」

「あ、うん」
太朗に電話をかける。


「━━━━はい、はい。
ごめんなさい!
━━━━━え!?今ですか!?
あ、いや…/////理一郎くんいるし、恥ずかしいです/////
━━━━━はい、そ、そうですよね/////
………/////ふぅー、た、タロくん…す、すすす…大好きです!
━━━━━え!?言葉が足りないって……あ…/////
………は、はい!
た、タロくん!イカれるくらい、大好きです!
━━━━はい////
あ、はい!」

一度、スマホを耳から外し、理一郎に「タロくんから」と渡してくる華子。

理一郎が受け取り、電話に出た。

「もしもし?」

『どうゆうことなの!!?』
理一郎が電話に出るなり、声を荒らげてくる太朗。

「はい?」

『まさか!わざとじゃないよね!?』

「まさか!冗談はやめてくれ!!」

『………』

「ほんと、やめてくれ!!変な妄想」

『……だったらいいけど』

「てか!ハナに何言わせてんの?」


『だって、不安で死にそうなんだもん。
本気で、冗談抜きで、死にそう。
しかもハナちゃんと理一郎が、二人っきりでいるなんて……』
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