タロくんとハナちゃん
華子の腰を抱いている太朗の手に、力が入る。

それを感じた華子。
太朗を見ると、苦しそうに顔が歪んでいた。

華子は、無意識に太朗の頭を撫でた。

「え?ハナちゃん?」

「━━━━はっ!?ご、ごめんなさい!」
慌てて離す、華子。

「軽蔑しないの?僕のこと」
太朗の瞳が、悲しそうに揺れる。

「え?どうしてですか?」

「愛人の子だよ?僕」

「でも、タロくんが悪い訳じゃないし…」

「………へぇ~!さすが、タロちゃんの彼女だね!
しかも、可愛い~!」
テーブル越しに、顔を覗き込んでくる。

「え……あ…あの/////」

「君の名前教え━━━━━うがっ!!?」
そんな丸雄を理一郎が後ろから引き剥がし、太朗が華子を隠すように抱き締めて、足で丸雄の胸元を蹴った。

「ハナちゃんに、それ以上近づかないで」
「丸雄、調子に乗りすぎ」

「はいはい…
てか、痛い!離せ」
ブン!!と理一郎の手を振り払う。
その拍子に、理一郎が後ろにふらついた。

丸雄はそんなに力を入れてないはず。
なのに、理一郎がふらついた。

理一郎も、かなり強い方なのにだ。

更に……振り払った拍子に丸雄の服が乱れ、胸元が少し見えた。

丸雄の胸には“髑髏”の刺青が彫られていて、華子を睨んでいた。

「あ…」
華子は思わず、ビクッと身体を震わせ太朗にしがみついた。

「ハナちゃん?」
「………」

「………あー、丸雄のタトゥー?」
丸雄を見て震えている意味がわかり言った。

華子が頷くと、太朗が丸雄を睨み付け「早く、隠して」と言った。

「わかってる。
でも、タロちゃん達だって怖いでしょ?
ライオン」

「え?あ…/////」

確かに太朗も、胸に王冠をかぶったライオンがいる。
太朗いわく、理一郎や俊彦達メンバーにも、彫っている部位は違うがライオンがいるらしい。

初めて太朗と身体を重ねた時は、本当にびっくりした。


『━━━━━ハナちゃん』
『はい!』

『あのね』
『はい』

『僕の身体見ても、嫌いにならないでね』

『え?』

『お願い!約束して?』

華子の手を、両手で包み込み顔を覗き込んで懇願する太朗。
ゆっくり頷くと、太朗は嬉しそうに笑い華子に顔を近づけた。

チュッ!チュッ!とキスをして、着ていたパーカーとインナーを一気に脱いだ。

『━━━━…っ…これ…』
華子を睨むように見ている、ライオン。
思わず、怯えて戸惑ったようになる。

『嫌いにならないで……』
そんな華子を見て、太朗は瞳を切なく揺らす。

華子も太朗を見て、切なくなる。
『…………好きです、タロくん』

『え?ハナ…ちゃん…?』

『好きです』

『ありがとう!』

『好きです。好き!』

『うん!僕も、大ー好き!』

『私こそ…その…////』

『ん?』

『は、初めて…で、ごめんなさい…』

『僕は、幸せだよ!』

『え?』

『言葉通り、ハナちゃんの全部が僕のものになるから!』

『タロくん…』

『だから、大丈夫!
僕が全部、教えてあげるよ?
……………僕だけしか見えなくなるくらいに…ね…』
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