婚約破棄?喜んで!~溺愛王子のお妃なんてお断り。私は猫と旅に出ます~
*エピローグ*

「ジュリア。今日も美しいね。子どものころから君のことが好きだけど、今日また恋に落ちた。君しか愛せない」

 私の気持ちは望まないと言っていたレオンは、お城に帰ったら急変した。毎日、会う度に愛の言葉ばかりを語りかけてくる。

「レオンさま、私に勝手に触らないでください」
 しかもスキンシップが多い。肩に触れてきたので、ぱしっと扇子で払う。

 あれだ。やたら毛繕いしたがり、遊んでと絡んでくる、仔猫に懐かれた気分。
 会話もなく、目も合せなかったのが嘘みたい。変わり用に戸惑うけれど、そこまで嫌じゃない。
 これが、溺愛なの? 慣れって恐ろしい……!

 王妃教育はなくなり、自由の時間が増えた。ガーベラが彩る城内を猫が悠々と歩く。
 ユリアは猫島が気に入って、念願の猫に囲まれた生活を送っている。
 仔猫姿だったレオは獅子ほどの大きさにあっという間に成長した。猫島の猫数百頭と元々国内にいた猫たちと日々、蝗虫を追い回し、食べてくれている。

 そのおかげで、田畑や村に緑が戻ってきた。
 ガリガリだったトニーとユウジーン兄弟たちも、今はすっかり健康的な体格になり、学校へ行っているという。
 高位貴族の老臣たちをまとめ指揮指導しているのはレオンだ。彼は約束通り、日に日に立派に、頼もしくなっていく。

 私の気持ち、望んでくれてもいいんだけどな……。
 猫を助けてくれたときに芽吹いた彼への感情は今、根を張り、すくすくと育っている。
  
 これ以上、愛を与えられると本当に溺れてしまいそうで困る。けれど、あの金色の髪に触れながら、伝えたいな。
 
 私も、猫も、あなたも好きだと。

 ゲームだけでは味わえなかった、少し先の未来を想像しながら、私は白い壁に描かれた金色の猫を指先でそっと撫でた。
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