もう唄わないで
「……誰!?」
私は、この子を知らない!!
【鬼の子】は嬉しそうに言う。
「見つけた……、響ちゃんだ」
頭の中がパニック状態になる。
叫び出しそうになるけれど、恐怖で声が出ない。
「怖がりの、響ちゃんだ」
つかまえられた腕が痛い。
涙がにじむ。
逃げたい。
逃げ出したい!
「うわああぁぁあああっ!!!」
みんなの叫ぶ声がした。
暗闇に目が慣れて。
私以外の、みんなの顔が見える。
恐怖で歪んだ、みんなの顔。
……この子は?
【鬼の子】は、誰?
ドンッ!!!
【鬼の子】が目の前で倒れた。
勇気くんが体当たりして、私と【鬼の子】を離してくれた。
「響ちゃんっ、逃げて!!」
勇気くんが叫ぶ。
その声で、みんな一斉に教室から走って逃げ出した。
私は怖くて、足が絡まってうまく走れない。
(待って、まって!置いていかないでっ!)
そして。
振り返ると、【鬼の子】がジタバタしている。
勇気くんが【鬼の子】を取り押さえようとしていた。