もう唄わないで
「学校の様子も知らせなさいよ」
「うん」
祖母は私の観ていたテレビを一緒に観て、「このタレントさん、最近よく見かけるけど、名前が覚えらんないのよね」と、笑った。
バラエティ番組が終わって、ニュース番組が始まる。
私は立ち上がり、「おやすみ、おばあちゃん」
と言って、二階に上がった。
二階の奥の部屋。
かつて子どもだった、お母さんが使っていた部屋。
私は明かりを付けたまま、ベッドに潜り込んだ。
暗い場所は、怖い。
眠る時も、電気は消せない。
あの夜から。
眠れなくて。
いけないと思いつつ、スマートフォンをいじっていたら。
優佳からのメッセージが届いた。
《ねぇ、面白い話聞いたよ!明日、学校で聞いてね!》
私は少し考えて、
《気になるなぁ。今話してよー》
と、返した。
でも優佳からの返信は無く。
私もスマートフォンをベッドのそばのサイドテーブルに置いた。
閉じたまぶたの向こうに光を感じながら。
私は、心の中で呟く。
ごめんね、って。