もう唄わないで
ごめんね、勇気くん。
私は今日もこうして日々を過ごしていて。
平和な日常の中にいて。
ごめんね。
翌日。
優佳は登校するなり、私の席まで嬉しそうに近寄って来た。
そのことが、何だか嬉しく感じる。
嬉しそうな顔で。
そばに来てくれると。
安心するんだ。
「気になってた?」
優佳はニコニコしている。
「うん。何なの?面白い話って」
本当のことを言うと、たいして気にしていなかった。
面白い話に興味はなかった。
でも、面白い話を私に聞かせたい、と思ってくれている優佳のことが、とても嬉しかった。
「私さー、塾に通い始めたじゃん?」
と、優佳。
「うん。そうだね?」
「そこにさ、怖い話が好きな子がいるんだ。他校の子なんだけどさ」
「……え?」
嫌な予感がした。
「ねぇ、それって怖い話なわけ?」
と、私は身を引きつつ尋ねる。