もう唄わないで

「だーいじょ〜ぶだよぉっ!なんて言うの、噂?ただの都市伝説なんだもん」

「都市伝説……」



優佳はニコニコ笑って、「信じらんない話っ!でも面白いよ?」と、続ける。



「鬼が目覚めるとか、そういう話なんだって。月の無い時?とか、なんとか。響はさ、知ってたりするの?星無市から引っ越して来たんだもんね?」



ドクンッ!



心臓に何かを金槌(かなづち)で打ち込まれたみたいな衝撃が走る。

胸が痛い。



でも。



(平気なふりしなくちゃ)



なぜかそう思った。



知られてはいけない気がした。

あれは。

あの夜のことは。

私達の秘密だから。




だから、
「え?知ってたりするって、何が?」
と、聞いてみた。

聞いてすぐに、後悔したけれど。



優佳は笑いながら、こう言った。



「【うるおい鬼】のことだよぉ」



体が。

ガタガタガタッ!!

急に震え出した。



寒さを感じて。

鳥肌が立っている。

< 19 / 99 >

この作品をシェア

pagetop