もう唄わないで
「だーいじょ〜ぶだよぉっ!なんて言うの、噂?ただの都市伝説なんだもん」
「都市伝説……」
優佳はニコニコ笑って、「信じらんない話っ!でも面白いよ?」と、続ける。
「鬼が目覚めるとか、そういう話なんだって。月の無い時?とか、なんとか。響はさ、知ってたりするの?星無市から引っ越して来たんだもんね?」
ドクンッ!
心臓に何かを金槌で打ち込まれたみたいな衝撃が走る。
胸が痛い。
でも。
(平気なふりしなくちゃ)
なぜかそう思った。
知られてはいけない気がした。
あれは。
あの夜のことは。
私達の秘密だから。
だから、
「え?知ってたりするって、何が?」
と、聞いてみた。
聞いてすぐに、後悔したけれど。
優佳は笑いながら、こう言った。
「【うるおい鬼】のことだよぉ」
体が。
ガタガタガタッ!!
急に震え出した。
寒さを感じて。
鳥肌が立っている。