もう唄わないで
帰らない子
月の無い時
「……見つけた」
私、宮本 響の腕をつかんで。
【鬼の子】は言った。
(あれ?)
私は混乱する。
(この声、誰の声だっけ?)
【鬼の子】は、私の腕をつかむ手の力を強めた。
「痛い……っ!」
ひんやりとした【鬼の子】の手。
細い指からは信じられないくらいの、強い力を感じる。
「見つけた……、響ちゃんだ」
目隠しした【鬼の子】の口角が、ニィッと高く上がる。
「怖がりの、響ちゃんだ」
事の始まりは、三日前の朝。
星無市立星無小学校の、四年B組の教室。
朝のショートホームルームの前。
「ねぇ、知ってるー?」
と、ニコニコしながら璃花子ちゃんは言った。
璃花子ちゃんは隣の市にあるダンススクールに通っていて、明るくて美人な私の親友だ。
「都市伝説ってあるじゃん?怖い話がいっぱいのさー」