もう唄わないで

祖母が車で迎えに来てくれて、家に帰る。



「響、病院に行こうか」



祖母が心配そうに私を見ている。



私は首を振り、
「部屋で休んでいたいんだけど」
と、伝えた。



体が震えたのは。



怖かったから。




あの夜のこと。



思い出したくなかったから。



何か言いたげな祖母を残して、私は二階に上がった。






部屋に入り、制服から部屋着に着替える。

スマートフォンには優佳からのメッセージが届いていた。



《怖い話して、ごめんね。また明日、元気に会おうね》




短いメッセージだけど、嬉しかった。




《優佳が謝ることないよ。ごめんね。また明日ね》
と返信して、私は学習机にスマートフォンを置く。



ふと、郵便物が置いてあることに気づいた。

祖母が今朝、郵便受けに入っていた私宛ての物を、学習机に置いておいてくれたんだろう。



手紙が二通。

一通は妹からだった。



時々、手紙を書いて送ってくれる。

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