もう唄わないで




駅から徒歩15分くらい歩いて、久しぶりの我が家に帰る。

玄関前の白い門扉。

開けると、お母さんの大切にしている花壇。

先に歩いていた妹が、玄関ドアを開けて待っていてくれる。



「お姉ちゃん、帰って来たよー!」



奥から、パタパタと足音をさせてお母さんが迎えてくれた。



「響っ、おかえりー」

「……ただいま」



四年前までは。

私の日常だった。



この家に暮らして。

「いってきます」や「ただいま」を。

何度、この玄関で言ったんだろう?






「あれ?お姉ちゃん、泣いてない?」



妹が心配そうな声を出す。



「あ、本当だ」
と、私は自分の頬を触る。

涙の雫が、ポタリとまた落ちる。



「ごめん、なんか、懐かしくて……」



そう言って、私はヘラヘラ笑ってみせた。



これ以上、家族に心配をかけたくなかったから。






同窓会は、その日の午後からだった。

星無市立星無小学校で集まる。

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