もう唄わないで
小学校に着くと、貼り紙がしてあった。
《四年B組同窓会にお越しのみなさまは、四年B組の教室まで!》
ぼんやりとその貼り紙を眺めていると、
「あら、響ちゃん?」
と、声をかけられた。
見覚えのあるその女性は、勇気くんのお母さんだと気づくまで、私には少し時間がかかった。
(こんな感じの人だったっけ?)
もっと、若くて。
もっと、ハツラツとした印象の人だと思っていたけれど。
「あ……、お久しぶりです」
「久しぶりね、今日のために星無市に帰って来てくれたの?もう、向こうには慣れた?」
「あ、はい」
何となくうつむいてしまう。
「あら、ごめんなさいね。おばさん、懐かしくて、つい声をかけてしまって」
勇気くんのお母さんは気まずそうに笑った。
(あ、しまった!違うのに)
「早くお友達と話したいわよね?ごめんね、もう行ってくれて大丈夫よ」
「いえ、あの、違いますっ」
私は誤解してほしくなくて、言い訳のように早口で続けた。
「あの、久しぶりで緊張しているんです。だから、その、謝ってもらうようなことなんて何もなくて」