もう唄わないで
「あれ?響ちゃん?」
そう言って近づいてきたのは、学級委員をしていた男子だった。
確か、名前は……。
「オレ、オレのこと覚えてる?川口!学級委員とかしてたんだけど」
「あ、うん。川口くん。覚えてる」
そう言いつつ、同窓会のお知らせの封筒に書いてあった差出人の名前も、そんな名前だったな、とぼんやり考える。
「え、マジで?嬉しいな。響ちゃん、大人っぽくなったね!一瞬誰だかわかんなかったもん」
「え……、あ、そう、かな?」
(何なんだ?この人)
妙に距離が近いというか。
そんなに親しくなかったはずなのに、馴れ馴れしいというか。
「やめろよ、川口。響ちゃん、困ってるじゃん」
背後から声がして、振り向くとそこには懐かしい顔があった。
「岡本くん」
「よぅ、久しぶり」
川口くんはシラけたような表情で、他の女の子のところへ寄って行った。
「響ちゃん、帰って来たんだ?」
岡本くんはそう言って、私を教室のすみに連れて行った。
そこには仲谷くんの姿もあった。