もう唄わないで
私はゾッとした。
勇気くんのお母さんは、私の目をじぃっと見ている。
「あなたの引っ越しって、突然だったでしょう?」
「あの……っ」
「おばさんの勘違いだったらごめんなさいね。……でも、あなたの引っ越しって、勇気の失踪と何か関係があるのかしら?」
何か。
何か言わなくちゃ。
怪しまれる……っ!
「響ちゃん?」
勇気くんのお母さんは、机の上に置いていた私の手に、自分の手を重ねた。
まるで「逃がさないよ」と、言われているみたい。
手を引っ込めたい。
離してほしい。
でも、そんなことしたら。
……私、怪しい?
「響ちゃん」
璃花子ちゃんがやって来た。
勇気くんのお母さんは、璃花子ちゃんに視線を移す。
「すみません、響ちゃんを連れて行ってもいいですか?一緒に写真を撮りたくてー」
勇気くんのお母さんはニコッと笑って、
「もちろん」
と、答えた。