もう唄わないで

「そうだよ。これだから、仲谷は」
と、岡本くんも眉根を寄せた。



「あの」
と、私は口を開いた。



「あの、ごめんなさい」



私だけ、星無市から逃げて。



……そう言おうとして。

結局それは言わなかった。



「でも、怖かったから」
と、代わりに言った。



そのことが、みんなの癇に障った。



「怖いのは、オレらだって同じなんだよ」
と、仲谷くんが言う。



「そうだよ、響ちゃんだけが怖い思いをしたみたいな言い方はしないで」



岡本くんも非難するような顔をする。



「一番に逃げたくせに、何が『怖かったから』だよ。響ちゃんがいなくなって、オレら三人がどんな思いをしたか、響ちゃんにはわからないんだろうな」
と、仲谷くんは私を睨む。



そして、
「お前の怖がりもいい加減にしろよ」
と、付け足した。



黙って聞いていた。

それしか、出来ない。

そう思った。

だって。

< 41 / 99 >

この作品をシェア

pagetop