もう唄わないで
何を言ったって怒られるんだもん。
埋まらないんだもん。
みんなとの溝は。
「やめてよ」
璃花子ちゃんが小声で言った。
小声だけど、みんな、璃花子ちゃんに注目した。
「あの日、怖かったのはみんな一緒なのはわかる。響ちゃんが引っ越しして、裏切られた気持ちになったのもわかる。でもさ」
璃花子ちゃんは私達を順番に見つめた。
そして、こう言った。
「一番、悪いのは響ちゃんじゃない。私なんだよ」
「え?どういうことだよ」
と、仲谷くんは聞いた。
「わ、私が……、あの時、私が言ったの。【うるおい鬼】をやろうって。怖いことなんか起きないからって」
璃花子ちゃんの声が震える。
仲谷くんは、
「いや、でもそれは子どもだったし」
と、璃花子ちゃんに優しい声で返した。
「子どもだった。怖くて、星無市から逃げた響ちゃんもね」
璃花子ちゃんの言葉に、仲谷くんは黙る。