もう唄わないで
「十二歳になる年だよね。正確には何年前だったかわかる?」
『わかった、記事をもう一度見てみる。ちょっと待ってて』
しばらくスマートフォンの向こうでは無音が続いた。
そして、
『わかったよ。三十三年前って書いてた』
と、璃花子ちゃん。
私は頭の中で計算する。
三十三と十二を足したら、四十五。
(今、四十五歳の人……)
「璃花子ちゃん」
『ん?』
「私、いる。その、三十三年前に星無小学校の生徒だった知り合い」
その週の、土曜日。
私は再び、星無市にやって来た。
璃花子ちゃんが駅まで迎えに来てくれる。
「びっくりだよね。こんな偶然ってあるんだねぇ」
と、璃花子ちゃんはしみじみと言った。
「うん」
私も、驚いていた。
まさか。
お父さんのお姉さん、……つまり私の叔母が、ピッタリ同い年だったなんて。
行方不明の女の子……、奈保ちゃんと。