もう唄わないで
「だからね」
と、叔母は言う。
「だから、余計に流行ったの。先生に見つからないように、内緒で遊ぶ子が増えて」
「あの……」
と、璃花子ちゃんは叔母を見た。
「都市伝説の【うるおい鬼】の話、ご存知ですか?」
璃花子ちゃんの問いかけに、叔母は目を丸くした。
「えっ、やだー。あの噂、まだ流れてるの?」
「叔母さん、知ってるの?」
「噂程度にね。でも、怖いよねぇ」
私は璃花子ちゃんと顔を見合わす。
それに気づかず、叔母は少し声のトーンを落として続けた。
「噂が本当だって言う子もいてさー、本当、嫌だった」
「えっ?」
私と璃花子ちゃんの声が揃う。
「叔母さんの学年にね、突然行方不明になっちゃった子がいるのよ。その子が【うるおい鬼】につかまったとかなんとか、騒ぐ子がいたの」
叔母は顎に手を当てて、続けた。
「確か……、名前は笠井 奈保ちゃん」
「!!」
「だから、そのあとは誰も【うるおい鬼】をやらなくなったみたい」