もう唄わないで
「そう。チャンスはその一度だけ。【鬼の子】になって最初に言い当てたのが、自分を言い当てた【鬼の子だった子】、つまり、自分の【差し出し】たご褒美を持っている【逃げる子】だったらいいの」
叔母の説明に、璃花子ちゃんが尋ねる。
「チャンスは一度なんですか?」
「うん。そういうルールだったよ。違う【逃げる子】を言い当ててしまった場合、ご褒美はもらった子の物になるの」
叔母は言いつつ、眉根を寄せた。
「なんかさー、ご褒美があるのもそれ返してもらうっていうのも、変わってるっていうか、ちょっと嫌な気分になる遊びだよね」
璃花子ちゃんは、何かを考えているのか黙っている。
私はそんな璃花子ちゃんに、
「もう帰ろうか」
と、声をかけて立ち上がった。
璃花子ちゃんも立ち上がり、玄関に向かおうと歩き出した時。
「♪当ててや 当ててや
うちが誰かを♪」
叔母が、唄った。