もう唄わないで
(早く、早く帰りたい……!)
そう思ったら。
歩く速度が速くなっていた。
傘を差したまま。
ほとんど走っている。
ヒタッ!ヒタッ!ヒタッ!
謎だった音が、何の音なのか理解した時。
私は。
振り向いてしまった。
「……ずるい」
と言った、その子は……。
私の後ろから。
ついてきているのは……。
あの夜の、【鬼の子】だっ!!!
(やだっ、なんで!?なんで!?)
頭の中がおかしくなりそう。
だけど。
私の後ろを走ってくるのは。
あの日のまま。
半袖のTシャツに、ショートパンツ。
ボサボサした髪の毛のツインテール。
目隠しをした、女の子。
「……ずるい。本当は違うのに」
その子は呟いた。
「本当の【鬼の子】は、響ちゃんのはずなのに……」