もう唄わないで
追いかけてくる
ほとんど叫びそうになりながら。
でも懸命にその衝動をおさえて。
私は走った。
(なんで!?なんであの子がいるの!?)
頭の中は大パニックで。
だけど、このまま家に帰ったら……。
(家を知られるのは、困る!家族が危険になる!)
私は家を通り過ぎて、夕方でも雨降りでも、人が大勢いる場所を目指した。
どんどん、視界は暗くなっていく。
そのことに恐怖心が膨らんでいく。
「ずるい、ずるい……」
あの子はまだ、ブツブツと呟いている。
勇気を出して、もう一度振り返る。
あの子の後ろに、まだ誰かがいるように見える。
……小学生くらいの、男の子。
(もしかして)
その男の子を見ようとしても、あの子の陰になってきちんと見えない。
顔があまり見えない。
でも、私は。
その男の子が誰なのか、わかった。