もう唄わないで
あの子には私の言葉が届いていないのか、ずっとブツブツと呟き続けている。
「ずるい、本当の【鬼の子】は響ちゃんなのに……。忘れちゃいけない」
あの子は、ほとんど消えそうな声で続けた。
「忘れちゃいけないの、21113だよ」
!?
21113?
何?
何の数字?
そしてあの子は、踵を返して。
あの子は、どこかへ消えて行った。
勇気くんの手を引いて。
暗い道を引き返して。
……私の知らない、どこかへ。
家に帰ったら。
妹が玄関までやって来て、こう言った。
「お姉ちゃん、やばいよ!都市伝説って、本当だったらしい!」
「え?」
私は見えにくい目で、妹の興奮した表情を見て、とんでもない予感がした。
とんでもなく、嫌な予感……。