もう唄わないで
「もう子どもじゃないし」
と、妹は笑った。
妹の部屋を出て。
自分の部屋に向かう。
勇気くんの言った言葉の意味を考えた。
『もう唄わないで』
……どういう意味?
唄わなくちゃ、遊べない。
遊ぶのをやめてってこと?
いや、【鬼の子】を目覚めさせないでってことなのかもしれない。
それくらい、怖い思いをしてるんだ。
勇気くんは。
私が。
必ず助ける。
助けるからね、勇気くん。
今度、私が【うるおい鬼の歌】を唄う時は。
勇気くんを取り返す時だからね。
そう思った時。
ふと、ある考えが頭の中に浮かんだ。
唄うと、遊びが始まる。
でも、唄わないと、遊びは終わる。
(あの時……うるおい鬼をしようってみんなで話した時、仲谷くんや勇気くんが話していた)
『……この【うるおい鬼】の遊びってさ、終わりがなくない?』
そう言った仲谷くんの言葉に、勇気くんが反応したんだ。
『うん。ずっと交代して遊べるもんね?ゴールが無い感じだよね?』