もう唄わないで

星無市で。

私はみんなともう一度、会いたかった。

どうしても。



《いいよ。集合かける!会おうよ》
と、璃花子ちゃん。



そのメッセージのすぐ後に、
《でもどうしたの?みんなで会いたいなんて、珍しいね》
と、璃花子ちゃんのするどい返事が届く。



《会ってから話すね》
と、誤魔化す。



それから何通か待ち合わせの約束をして、やり取りを終えた。







……今夜、夜通し雨が降る。

月は、見えない。



私は今朝、その天気予報を見て。

ある決心をした。




勇気くんを、取り戻す。



早くしないと他の誰かがまた、肝試しをしてしまうかもしれない。

奈保ちゃんにその誰かの名前を知られるようなことが起こったら。

【鬼の子】が、他の子になってしまったら。

取り返しがつかない。



(でも、きっと私が【鬼の子】だから大丈夫だとは思うけれど……、【鬼の子】であるという確信は持てないし)



【うるおい鬼の歌】で、私だけではなく奈保ちゃんも目覚めている。

本当の【鬼の子】は私かもしれないけれど。

奈保ちゃんもまた、【鬼の子】のまま、さまよっている。

< 78 / 99 >

この作品をシェア

pagetop