もう唄わないで
星無市で。
私はみんなともう一度、会いたかった。
どうしても。
《いいよ。集合かける!会おうよ》
と、璃花子ちゃん。
そのメッセージのすぐ後に、
《でもどうしたの?みんなで会いたいなんて、珍しいね》
と、璃花子ちゃんのするどい返事が届く。
《会ってから話すね》
と、誤魔化す。
それから何通か待ち合わせの約束をして、やり取りを終えた。
……今夜、夜通し雨が降る。
月は、見えない。
私は今朝、その天気予報を見て。
ある決心をした。
勇気くんを、取り戻す。
早くしないと他の誰かがまた、肝試しをしてしまうかもしれない。
奈保ちゃんにその誰かの名前を知られるようなことが起こったら。
【鬼の子】が、他の子になってしまったら。
取り返しがつかない。
(でも、きっと私が【鬼の子】だから大丈夫だとは思うけれど……、【鬼の子】であるという確信は持てないし)
【うるおい鬼の歌】で、私だけではなく奈保ちゃんも目覚めている。
本当の【鬼の子】は私かもしれないけれど。
奈保ちゃんもまた、【鬼の子】のまま、さまよっている。