もう唄わないで

「……わかった」
と、私も渋々頷いた。



「絶対怖いことなんて起きないって!響ちゃん!!もし何かあったら、私が守ってあげるからさー」



璃花子ちゃんはケラケラ笑って言う。



(すごいなぁ、璃花子ちゃん。頼もしいんだなぁ)



私は怖くて仕方がないのに。

仲谷くんが、勇気くんの顔を見る。



「勇気くんは?行くよな?【うるおい鬼】しようぜ」



勇気くんは困った表情で、でも頷いて。

私達の肝試し決行は、秘密の約束になった。






それから。

三日経った。



勇気くんが、
「今夜は雲が多くて、月が隠れる可能性が高いんだって」
と、教えてくれた。



確かに朝からどんより曇っている。



「じゃあ、今夜ね」
と、璃花子ちゃんが言い、みんな黙ったまま頷いた。






その夜。

私達は旧校舎に忍び込んだ。



旧校舎の、歩くとギシギシ音が鳴る廊下を通って。

私達は入口から近くて、鍵のかかっていなかった一年二組の教室に入った。

< 8 / 99 >

この作品をシェア

pagetop