もう唄わないで
「でも、二人のことを結局は助けられなかった」
「……違うよ」
「違わないよ。勇気くんのこと、助けられなかったし。響ちゃんのことだって、勇気くんみたいに気遣えなかった。……ごめんね」
岡本くんがうつむく。
「違うよ」
と、私はもう一度言った。
「岡本くんだけだよ。あの夜、私達の中で勇気くんのことを、助けようと行動を起こしたの。私は怖くて、床にへたり込んでいただけだもん」
「……」
「岡本くんのその勇気は、すごいよ。私はそれで、決心出来たんだ。だから、私に勇気をくれたってこと。それだけで、充分だよ」
「……えっ?決心って?」
岡本くんが私をまじまじと見つめたその時。
「よっ」
と、仲谷くんがやって来た。
璃花子ちゃんも一足違いに続いてやって来る。
「……来てくれてありがとう」
と、私は全員に言った。
「どうしたの?響ちゃん」
と、璃花子ちゃん。
心配そうな表情をしている。