もう唄わないで
「でも、そしたらさ、その奈保ちゃんはどうなんの?」
と、仲谷くんがみんなを見る。
「見殺しにすんの?」
「そんな言い方、やめてよ」
と、璃花子ちゃんが眉間にシワを寄せる。
私は、静かに言った。
そうだよって。
「えっ?」
全員が私を注目する。
「そうだよ。勇気くんを返してもらうためには、奈保ちゃんは助けられない」
「は?何言ってんの?そんなの、ひどいじゃん」
と、仲谷くん。
「うん。ひどいよね?でも、それ以外に勇気くんを助ける方法がわからないんだ」
「……」
「私達は、やってはいけないことをした。どんなに悔やんでも、取り返しがつかないんだよ。それだけのことをしたんだよ」
「……」
「勇気くんがこのまま、暗闇の中で犠牲になる必要なんて無い」
「それだったら、奈保ちゃんだって」
仲谷くんはほんの少し、声が震えている。
私は冷静な声で返した。
「そうだよね?だから、みんなはもうやらなくてもいいよ」
璃花子ちゃんが、
「何言ってんの?」
と、私の手を握る。