もう唄わないで

「響ちゃんだけで【うるおい鬼】をするの?」



私は首を振った。



「ううん、私だけじゃない。奈保ちゃんもいる」

「……!」

「私は奈保ちゃんを言い当て返す。そして、勇気くんをこの日常へ帰す。奈保ちゃんへの心苦しい気持ちは、私だけが背負う」

「ダメだよ、なんで響ちゃんだけが!?」
と、岡本くんが言った。




「だって、私、逃げたから」



「え……」

「みんなに不安や悲しみを押し付けて、私は逃げたから。今度は私が背負う番なんだと思う」






私は、今夜、奈保ちゃんに【鬼の子】を押し付ける。

恨まれても。

後悔しても。

それだけは、やり遂げる。



勇気くんを取り戻すために。







「……私も、行く」



璃花子ちゃんが手を挙げた。



「オレも!」
と、岡本くんも手を挙げて、
「みんな同じだよ、響ちゃん。みんなでやってしまったことなんだから、今度だってみんなで背負うことにしようよ」
と、優しい声で言った。

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