もう唄わないで
【鬼の子】の気持ち
【うるおい鬼】が始まった。
【鬼の子】は、私。
【逃げる子】の歌声を聴きつつ、ウロウロと教室内をさまよう。
真っ暗で。
何にも見えない。
これは視界が暗いだけじゃないな、と頭のどこかで思う。
目隠しをされたんだ。
きっと、奈保ちゃんに。
「♪当ててや 当ててや……」
歌声が何重にも重なって。
はっきり聴こえるけれど、その声のする方向に移動しても、それが誰なのかわからない。
次第に私の気持ちは焦ってくる。
(早く、誰でもいいからつかまえたい)
一歩、足を踏み出すたびにそう思った。
(ご褒美が欲しい!)
自分じゃない何かに洗脳されていくみたいに。
……怖い。
早く【鬼の子】をやめたい。
(早く誰か、つかまえなくちゃ)
そう思って、ゾッとした。
(これが、【鬼の子】の気持ち……)