もう唄わないで
恐怖心と物欲のような気持ちで。
私の頭の中はいっぱいになる。
ふと、誰かに触れた。
(誰!?)
つかまえたい気持ちが、心の中で膨大になっていく。
(ここで誰かを当てれば、自分は【鬼の子】じゃなくなる!ご褒美だってもらえる!)
目隠ししている下で。
まぶたをぎゅっと閉じた。
(違うっ!)
それじゃ、意味が無い!!
私のターゲットは!
笠井 奈保ちゃんだ!
言い当て返すために、私はここにいるんだ!!
勇気くんを、取り戻すために!!
この手に触れる誰かは。
奈保ちゃん?
それとも、みんなのうちの誰か?
混乱する。
どうしよう、奈保ちゃんとみんなの区別がつかない!!
なんて孤独なんだろう。
なんてつらいんだろう。
【うるおい鬼】は。
なんて悲しい遊びなんだろう。
【鬼の子】も、【逃げる子】も。
誰も幸せになんかなれない。
ずっとグルグルと、孤独を順番に味わうだけ。