もう唄わないで

カビ臭い教室の中。

窓の外をのぞくと、月はちょうど雲に隠れている。

教室の中でもやっぱり電気はつかないから、私達は璃花子ちゃんのスマートフォンの明かりを頼りに、みんなで輪を作った。



「カビ臭いね」



そう言った勇気くんに頷き、私はポケットからぶどう味の飴玉を取り出した。



「喉が痛いから舐めようかな。欲しい人いる?」

「今、大丈夫。あとで貰うかもだけど」
と、璃花子ちゃんが言い、みんなも「要らない」と首を振る。



私は飴玉を口の中に入れた。

さっきからそわそわ落ち着かない。

飴玉のおかげで少しでも落ち着けるといいんだけど。



「じゃあ、【うるおい鬼の歌】の確認しよう?みんなが覚えてるか、一度唄ってみようよ」
と言った璃花子ちゃんが、「せーのっ」と合図をする。



「♪当ててや 当ててや

うちが誰かを

当ててや 当ててや

あげるさかいに

うちを鬼にしてや♪」

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