もう唄わないで
(私は、一人で戦ってるんじゃない)
この歌声は、璃花子ちゃんだ。
(璃花子ちゃんが、教えてくれているんだ)
そっと、私の手から逃げるように。
璃花子ちゃんの腕がするりと抜ける。
(まるで『私じゃないよ』って言ってくれているみたい)
璃花子ちゃんの歌声が少しずつ遠くなっていく。
遠ざかるその歌声を追うように、もう一つの歌声が私のそばを通り過ぎていこうとしている。
高い、女の子の歌声。
私は、手を伸ばした。
パシッ。
腕を。
つかんだ。
驚くほど、その腕は冷たい。
「……つかまえた」
そう呟くと。
その歌声が止んだ。
バタバタバタッ!!
つかんだ腕が、乱暴に動こうとする。
離してもらおうと、必死になっていることがわかる。
奈保ちゃんは、見つかりにくいように。
きっと璃花子ちゃんのそばに、ずっとくっついていたんだ。